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第69話 北へ

last update Huling Na-update: 2025-05-06 11:01:31

 家の人数が増えたおかげで、レナやバドじいさんの生産がはかどるようになった。

 新しく来た奴隷たちのスキルは低いが、助手として役に立っている。

 俺の鍛冶もずいぶん上達して、売り物に出しても恥ずかしくない武具を造り続けている。

 かなりの確率で特殊効果のついた武具が作れるようになった。

 こうなるとダンジョンで探すより効率いいかもな。

 店はますます繁盛して、わざわざ遠い町から買い出しに来る人もいるほどだ。

 冬の間の活動は、以前と変わらないままだった。

 新しく来た奴隷たちの生活を整えて、元からのみんなと慣れさせるためでもある。

 ただ、冬の間はあまり遠出ができない。雪が降るし気温が低い中での移動は危険だからな。

 ルクレツィアとクマ吾郎のダンジョン組も外出の回数を減らして、家の警備や訓練を中心に行ってもらった。

 ひとつ屋根の下で食卓を囲み、仕事をする。夜は同じ部屋の三段ベッドでそれぞれ眠る。

 そうした日々を過ごすことで、春になる頃にはみんなすっかり仲良くなって馴染んでいた。

 そうして春になったある日のこと。

 俺は旅の準備をしていた。

 春の誕生日、十八歳を祝ってもらった後に出発する予定でいる。

 北へ向かって、国境の向こう側で開拓村の――農業適地を探すためだ。

 今までも手頃なダンジョン探しであちこちうろついたことはある。北のほうにも向かったことはある。

 けれども今回は、それより長旅になるだろう。

 俺といっしょに行くメンバーは、クマ吾郎とイザク。

 イザクがいれば農業に関しての判断ができる。

 俺とクマ吾郎は護衛だな。

「ご主人様、いってらっしゃい」

「いってらっしゃい!」

 みんなに見送られて家を出る。

 中でもエミルは何か言いたそうだった。

 亡き母親が北の土地生まれだというから、行ってみたかったんだろうな。

 だが
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  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第1話 気がついたら流れ着いていた

     ドォンッ! 体を突き上げるような激しい衝動で、俺は目覚めた。 まわりは真っ暗。何がなんだか分からない。 手探りでドアらしきものを探り当て、必死の思いでこじ開ける。 外は嵐だった。 激しく揺れる地面は木の床で、雨粒と波をかぶって水に沈みかけている。 大波が襲うごとに船は軋んで、今にも壊れてしまいそうだ。 船だ。俺は船に乗っていたんだ。 どうして? 思い出せない。 まるで見知らぬ場所の影絵を見るように、目の前の光景が展開されている。 ドンッ! また衝撃が走る。 すでに沈みかけている船が、波をまともに受けて揺らいでいるのだ。 ギィィと木が軋む嫌な音がして、床の傾きの角度がぐんと上がる。 高波をかぶって俺は転んだ。為すすべはなかった。 船の手すりを掴もうとしたが、全てが遠い。 俺は海に放り出された。 次々と襲ってくる波と雨のせいで、水中に落ちたと気づくのに時間がかかった。 激しい波に濁る海中で、船が真っ二つになっているのが見えた。 真っ二つになって、渦を起こして沈んでいくのが。 それが、俺の意識の最後になった。 パチ、パチと小さな音がする。 全身ひどく寒かったけれど、その音のする方向だけ少し暖かい。 そっと目を開けてみると、オレンジ色の炎が見えた。 焚き火だ。 焚き火のそばに二人の人影がいる。 俺の目はまだかすんでいて、どんな人物なのかまではよく見えない。「うう……」 声を出そうとしたが、うめき声しか出なかった。「おや。目が覚めたか」 若い男の声が答える。「君は三日も眠っていた。ニアに感謝するんだな。わざわざ君を海から引き上げて、こうして世話までしたのだから」 少し視力が戻ってくる。 よく見れば、二つの人影は若い男と少女のようだ。「あなた、難破船から落ちて溺れたのよ。覚えてる?」 ニアという少女が言う。十三歳か十四歳くらいに見えた。「覚えて……る」 かすれた声だったが、ちゃんと喋れた。 男が立ち上がって、俺にマグカップを差し出してくれた。 中身は温めたミルクで、ゆっくりと飲めば腹が温まってくる。「ありがとう、ええと」「ルードだ」 男、ルードは素っ気なく言ってまた焚き火の前に腰を下ろした。「運が良かったな。船はバラバラになって、浜に打ち上げられたのは瓦礫と死体ばかりだった。生きているのが

    Huling Na-update : 2025-03-09
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第2話 謎肉

     ため息をついたルードが投げやりな口調で言った。「まあいい。意識が戻ったのだから、我々は先に行く。あてのない旅ではあるが、他人のために足止めはごめんだからな」「ルード。彼は目を覚ましたばかりよ。もう少しだけ助けてあげましょう」 ニアが言うと、ルードはあからさまに舌打ちをした。なんだこいつ、性格悪いな。「そういえば、名前を聞いていなかったわね」「ニア、よせ。名など聞けば余計な縁ができる。今の我らにそんなものを抱える余裕があるか?」「縁ならもう十分にできているわ。今さらよ。……それで、あなたの名前は?」 俺の名は――「ユウ、だ」 何も思い出せないくせに、名前だけはするりと出てきた。 それともYOUのユーだろうか。 分からんが、ユウは意外に馴染みがいい。本当に俺の名前なのかもしれない。「ユウ。もう少し眠るといいわ。私たちが火の番をするから、安心して」 ニアがにっこりと微笑んだ。 横ではルードが苦い顔をしている。 分からないことだらけで不安だったが、体は冷えて疲れ切っている。 返事をするのもままならず、俺は再び眠りに落ちた。 再び目覚めると、体はずいぶんマシになっていた。 焚き火のそばには、相変わらずニアとルード。二人は小声で何事か話している。 俺が目を開けたのに気づいて、ルードが言った。「顔色は良くなったな。起き上がれるか?」「ああ、大丈夫だ」 体のあちこちが痛んだけれど、俺は立ち上がった。 ぐっと手足を伸ばす。洞窟の天井は案外高くて、俺が手を伸ばしてもぶつかったりしなかった。 深呼吸をすると、腹がぐうと鳴った。 いいことだ。空腹を感じるのは、正常なことだからな。「ほら、飯だ。食え」 ルードが投げて寄越したのは……生肉である。 生肉は地面を転がり、土で汚れている。 いや生肉って。病み上がりの怪我人に与えるか普通? 生肉を手に取って俺は困った。困ったが、腹はぐうぐう鳴っている。 仕方なく肉を焚き火であぶってみる。 串もなくあぶったものだから手が熱い。「うおっアチッ」 肉の端に火がついて、ついでに俺の手もやけどしそうになった。こりゃだめだ。 仕方ない、生のままだがかじってみよう。 俺は口を開けて肉にかぶりつく。「ォエェェッ」 で、普通に吐いた。 胃の中が空っぽだったので胃液を吐いてしまった。 当

    Huling Na-update : 2025-03-09
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第3話 初めての戦闘

     足元に転がってきたのは、古びた剣と盾だった。 どちらもあちこち錆びついており、いかにもガラクタといった様子。 手に持ってみると無駄にずっしりと重い。質の良くない金属で作ったものなのだろう。 ルードが言う。「お前がこれから一人で生きていくには、まあ、冒険者になるのが妥当だろうな。なにせ森の民だ。下手に出自を知られれば、定住はおろか迫害を受けかねん。であれば、自分の身くらいは自分で守ってみせろ。……ニア」「うん」 ニアが立ち上がって、小さく何事か呟いた。 ぐるり、空気が奇妙な渦を巻く。その渦の中心に小さい何かが生まれた。「ピキー」 それは丸くっこくて水分が多そうな、よく分からない生き物だった。 白っぽいしずく型でぷにぷにしている。 俺は何となく某国民的RPGの一番弱い敵を思い出した。「ピキー」「ピキッ」 そいつらは全部で三匹いる。ぴょんぴょんと跳ねている動きは、ちょっと可愛いかもしれない。 ルードが腕を組む。「最弱魔物の『グミ』だ。初心者の相手としてはちょうどいいだろう。そいつらを殺せば、ルード先生の親切は終了だ。さあ、やってみせろ!」「ピキーッ!」 そいつらはぴょんぴょん跳ねながら、襲いかかってきた!「うわ!」 俺は慌てて剣と盾を持つ。 すると―― デロデロデロ…… 何とも不吉な気配がした。手元の剣と盾は不気味な赤黒い色に包まれている。 ただでさえ無駄に重量があったのに、さらに重くなりやがった。ここまで来ると素手のほうがいいと思うくらいだ。「あぁ、すまん。その武具は呪われていたか。まあ後で解呪法も教えてやろう。とりあえず頑張れ」 ルードが無責任なことを言っている。 絶対わざとだ、あれ!「ピキ!」 どすっ! グミの一匹が体当たりをしてきた。「ぐふっ」 小さい割に強烈な体当たり。いや、俺が弱いのかもしれん。「ピキピキ!」「ピーッ!」 立て続けに三匹からぶつかられて、俺は思わず膝をつきそうになる。 だがここで体勢を崩せば、よってたかって襲われて死ぬ。ルードは助けて……くれなさそうだ! 俺は必死に周囲を見た。 洞窟はそんなに広くはなく、奥に行くに従って幅が狭まっている。 奥の壁を背にすれば、三匹同時に攻撃されることはないだろう。「くそっ!」 重すぎる両手の剣と盾を引きずるようにして、俺は洞窟

    Huling Na-update : 2025-03-09
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第4話 別れとオール1

     床にへたり込んだ俺の目の前に、小瓶に入った液体が差し出された。 少し目を上げるとニアがいる。「お疲れ様。最初としては頑張ったと思うわ。このポーションを飲めば体力が回復するから、どうぞ」 彼女はルードよりはよほど信頼できる。 瓶を受け取って赤い液体を一気にあおった。 味は正直、薬臭くてうまいとは言えない。 それでも渇ききった喉を滑り落ちる感触が心地よい。 すっかり飲み干すと、確かに体が楽になった。 俺は立ち上がって空き瓶をニアに返した。「それから、これも」 ニアは今度は古びた巻物を渡してきた。「これは?」「解呪のスクロール。いつまでも呪われた装備だと、困るでしょう。後で読んでみて」「ありがとう!」 まあその呪われた装備をそうと言わずに寄越したのは、そこにいるルードなんだが。 ちなみにヤツは全く反省のない顔で、肩をすくめている。「親切にしてやるのも、もう十分だな。ニア、そろそろ行くぞ」「うん」 ニアとルードは連れ立って洞窟を出ていく。 洞窟の出口でニアが振り返った。「ここから西の海岸を南に行けば、町があるから。一度行ってみるといいわ。それから焚き火の横の袋は、あなたへのささやかなプレゼント」「俺からも最後の忠告だ。森の民の尖った耳は、差別と迫害の対象になる。町に行くなら隠しておけ」「お互い生き延びていれば、またいつか会えるわ。さようなら」 二人は口々にそんなことを言って、今度こそ本当に洞窟から出て行った。 大して広くもない洞窟の中で、俺は一人になった。「さて、ニアの言う『プレゼント』は、っと……」 俺はまず、袋の中身を確認してみることにした。 背負うのにちょうど良さそうな大きさの袋の中には、カチカチに固いパンと干した果物、さっきもらった赤いポーションがいくつか、それから色違いのポーションと巻物が何枚か入っていた。 ルードの呪われた装備よりよっぽどまともである。ありがとう、ニア。「まずは装備の解呪をしないと」 赤黒く光る剣と盾は手から離れてくれず、しかもやたらと重くて不便で仕方ない。 俺はもらった解呪のスクロールを開いて読んでみた。 口に出して巻物の文字を読み上げると、装備が白い光に包まれた。 おっ、これが解呪か? そう思ったのもつかの間、剣と盾の赤黒い光が抵抗するように強まって、白い光を吹き飛ばして

    Huling Na-update : 2025-03-09
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第5話 異世界転生したんだって

     魔力やスキルでわけが分からなくなってしまったが、俺はもう一つ心配があった。 それは、俺が一体どうして船に乗っていたのか思い出せないことだ。 ステータスでは俺は十五歳の森の民であるらしい。 しかしそう言われても実感がない。 正直俺は、自分がもっと大人のつもりでいた。二十代とか、何なら三十歳くらいのだ。 それに時折自然に脳みそを流れていく、変な言葉や記憶たち。 某国民的RPGやら、底辺高校のヤンキーやら、バトル漫画やら。 俺にとってはこれらの方がよほど馴染みがあって、今の自分は突然どこか別の場所に放り込まれたようにすら感じる。「異世界転生……?」 スキルやらステータスやらがある以上、ここは俺が本来いた場所ではない。そう確信がある。 ならばここは別の世界で、俺自身も前の俺ではない。 それこそゲームやアニメで聞いたことのある、別の世界に生まれ変わる――異世界転生をしてしまったと考えるとしっくり来た。 船が沈没したショックで前世の記憶を思い出したってとこか。 思い出した引き換えに今までの十五歳分の記憶が消えてしまったのが痛いが、今さらどうにもならん。「いやあ、どうするかなぁ……」 俺は心の底からのため息をついた。 異世界転生したらしいと分かっても、事態は何も変わりはしない。 俺の両手は呪われた剣と盾が張り付いており、ステータスはほぼオール1で、頼れる人は誰もいない。 何もかもが絶望的だ。 けれども俺は死ぬのは嫌だった。 というか、こんなわけの分からん状態でわけの分からんままで死ぬとか、誰だって嫌に決まっている。 船の難破も、ルードみたいな性格クソ悪野郎に生肉食わせられたのも、理不尽な目に遭うのはもうコリゴリだ。 死んでたまるか。 生き延びてやる。 俺の願いは生きること……! これからこの世界で、きっちり生ききってやるんだ! 他でもない、俺自身の力で!! そう決めたら、腹の底から力が湧いてきた。 そうだ、このままじゃいられない。やられっぱなしでいられるか!「町に行ってみよう」 このまま洞窟でこうしていても、ただ時が流れるだけだ。 町に行けばスキルが習えるかもしれない。そうしたら呪いも解ける。 生きていくのに必要だった。「腹が減ったな」 これから長時間の移動をするのだ。余裕のあるうちに飯を食っておこう。 俺は

    Huling Na-update : 2025-03-11
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第6話 不注意一瞬、事故のもと

     袋の中身は少々の食料と、何色かのポーション。それに巻物がいくつか。 うち、赤色のポーションは体力を回復する。これは自分の体で体験済みだ。 では赤色以外のポーションと巻物はどうだ。 解呪の巻物は何の役にも立たなかったが、攻撃に使える巻物はないだろうか。 そう思って巻物を取り出してみたがけれど、これがどんな効果を発揮するのか皆目分からん。 そういえば解呪の巻物もニアが「これで解呪できる」と渡してきたからそういうものだと分かったのであって、俺が解読したのではなかった。 だが、それならとりあえず読んでみよう。やってみればよかろうなのだ。 解呪も失敗はしたが、白い光が出てきた。俺程度の魔力でもちゃんと発動はする。 俺はボロボロの巻物を手に取った。 開いて呪文を読み上げる。すると……「――えっ?」 ヒュン! と軽いめまいのような感覚がして、次の瞬間、俺は地面に立っていた。 場所はさっき登っていた木から十メートルちょい離れた場所か。 なんだこれ。瞬間移動した!? 木の上から消えた俺が地面に立っていると気づいて、グミどもがわらわら転がってきた。 ぎゃああああ! 俺は再び猛ダッシュして、手近な木に登った。「なんだこれ! なんだこれ! また死ぬところだったぞ」 何とか別の木に登って、俺はゼエゼエと荒い息を吐く。 やっぱり効果不明のものに思いつきで手を出すのは良くない……。 俺はとても反省した。 次。 反省した俺は、少しでも効果を確かめてから使うことにした。 巻物はもうどうしようもない。だって、いくら眺めても効果の予想ができないからな。 俺はポーションの瓶を取り出した。 赤以外では、緑色、ピンク色、透明(わずかに黄色)がある。 それぞれ瓶のふたを取り、匂いをかいでみる。 緑色のポーションは生臭い匂

    Huling Na-update : 2025-03-12
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第7話 不注意一瞬、事故のもと

     地面に降り立った俺に、赤グミが体当たりを仕掛けてくる。 その動きの素早さも重量感も白グミより一回り上で、俺はやっとのことで盾で受け止めた。やっぱりこいつ、手ごわい。 呪われた剣を振り下ろす。赤グミにかすったが、大したダメージになっていない。 赤グミの動きは素早く、俺ののろまな剣がまともに当たる気配はない。 二度目の体当たりを受け、俺は降りたばかりの木に背をつけた。 防戦一方に追い込まれて、じりじりと木を回り込みながら反撃のチャンスを探す。 そうして何度目か、赤グミは助走をつけた体当たりを仕掛けてきた。これをもろに食らえば、たとえ盾で受け止めても無事でいられないだろう。 弾丸のような勢いで飛びかかってくる赤グミを、渾身の力で盾で受け――「くらいやがれ!!」 受け止めはせず、受け流すように。 木の幹に沿って勢いを流しながら、赤グミを盾ごと地面に叩きつけた。 ――まだ残っていた硫酸溜まりへと。「ピギ――――――ッ!!」 硫酸に体を焼かれて、赤グミが絶叫する。 何とか逃げようともがくが、必死に盾で押さえつけた。 やがてだんだん抵抗する力が弱まって、ついには何もなくなった。「ハアッ、ハァ……」 硫酸溜まりから盾を引き上げ、何度も荒い息を吐く。「ははっ……ざまあみろ」 ふと盾を見れば、もともと錆びてボロボロだったのがさらにひどい有り様になっていた。硫酸に焼かれたせいであちこち腐食している。 こんなでも呪われていて外せないとか、どんな理不尽だよ。 そして、ふと。『ユウのレベルが2になりました』 奇妙に無機質な声が耳元で聞こえて、俺は飛び上がった。 声はそれだけを告げた後、ふっつりと聞こえなくなる。「レベル上がったって? マジでゲームの世界だな……ステータスオープン」 名前:ユウ 種族:森の民

    Huling Na-update : 2025-03-13
  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第8話 港町カーティス

     酒場のメニューは壁際に木札が張られている。  港町らしく、魚のメニューが多い。  それからこの町は「カーティス」というようだ。「港町カーティスへようこそ!」と天井から木札が吊られていた。「ご注文は?」 さっきの娘さんがやって来た。「……煮干しで」「煮干しだけ?」「お金がないんで……」 手持ちのお金じゃそれ以外のメニューを頼むのが無理なんだよ。「あはは、了解。まあ、煮干しだって魚のはしくれだから。知恵と器用さを鍛えてくれるわよ。きみ、駆け出し冒険者でしょう。頑張ってね」 何? 今、彼女は聞き捨てならないことを言った。「食べ物によってステータスが上がるのか?」「そうよ。そんなの常識じゃない」「じゃ、じゃあ、魔力を上げるには何がいい?」「魔力なら果物じゃない? うちの店にもあるわよ、デザートで」「煮干し、取り消しで! もう一回考える」「はいはい」 何と、まさか食事でステータスが上がるとは。栄養素の問題なのか?  しかしそれにしては、十五歳の俺がステータスオール1なのはおかしくないか?  生きていれば飯は食う。十五年分食べ続けて1ってどういうことだ。  船の難破で死にかけてリセットされたのか、それともこの世界お得意の理不尽かよ。 まあいい、これから魔力を上げて解呪すればいいんだ。  俺はデザートのメニューを眺める。 ……どれも手持ちじゃ頼めない額のものばかりだった。 俺は結局煮干しを頼んで、酒場の閉店まで粘って外に出た。  もう深夜で、辺りは真っ暗。  しかし小銭を使い果たしてしまった俺が、どこかに宿を取れるはずもなかった。 煮干しだけでは腹持ちが悪い。さっきから空腹で仕方がない。  袋の中にはもう一個だけ堅パンがある。干しブドウも少しだけ残っている。  それらは俺の心の支えだ。今、食ってしまうのはためらわれた。 今の季節は春ってとこか。昼間動き回ってい

    Huling Na-update : 2025-03-14

Pinakabagong kabanata

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第69話 北へ

     家の人数が増えたおかげで、レナやバドじいさんの生産がはかどるようになった。 新しく来た奴隷たちのスキルは低いが、助手として役に立っている。 俺の鍛冶もずいぶん上達して、売り物に出しても恥ずかしくない武具を造り続けている。 かなりの確率で特殊効果のついた武具が作れるようになった。 こうなるとダンジョンで探すより効率いいかもな。 店はますます繁盛して、わざわざ遠い町から買い出しに来る人もいるほどだ。 冬の間の活動は、以前と変わらないままだった。 新しく来た奴隷たちの生活を整えて、元からのみんなと慣れさせるためでもある。 ただ、冬の間はあまり遠出ができない。雪が降るし気温が低い中での移動は危険だからな。 ルクレツィアとクマ吾郎のダンジョン組も外出の回数を減らして、家の警備や訓練を中心に行ってもらった。 ひとつ屋根の下で食卓を囲み、仕事をする。夜は同じ部屋の三段ベッドでそれぞれ眠る。 そうした日々を過ごすことで、春になる頃にはみんなすっかり仲良くなって馴染んでいた。 そうして春になったある日のこと。 俺は旅の準備をしていた。 春の誕生日、十八歳を祝ってもらった後に出発する予定でいる。 北へ向かって、国境の向こう側で開拓村の――農業適地を探すためだ。 今までも手頃なダンジョン探しであちこちうろついたことはある。北のほうにも向かったことはある。 けれども今回は、それより長旅になるだろう。 俺といっしょに行くメンバーは、クマ吾郎とイザク。 イザクがいれば農業に関しての判断ができる。 俺とクマ吾郎は護衛だな。「ご主人様、いってらっしゃい」「いってらっしゃい!」 みんなに見送られて家を出る。 中でもエミルは何か言いたそうだった。 亡き母親が北の土地生まれだというから、行ってみたかったんだろうな。 だが

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第68話 新しい奴隷、再び

     家は人数が増えるのを見越して増築が済んでいる。 元からいるメンバーに、自分の助手になる奴隷の面倒をきちんとみるよう頼んだ。 少し時間はかかっても、この家に馴染んでほしいと思っている。「よろしくね!」 エミルは同じ年頃の少年と少女がやってきて、とても嬉しそうだ。 新しく買った子らはパルティア人。 こうして見ると、エミルの色白さと色素の薄さが目立つ。「エミル、ちょっといいか?」「はい、ユウ様」 エミルの経歴書には『種族:パルティア人』とある。 違和感を確かめるのに、俺は聞いてみることにした。一応、他の子とは別の部屋でな。「エミルの両親はどんな人なんだ? ほら、お前は他のパルティア人と髪や目の色がちょっと違うだろ。不思議に思って」「…………」 彼は目を伏せてしまった。 子供が奴隷になるような状況だ。トラウマに触れてしまったかもしれん。「すまん、言いたくなければいいんだ」 エミルはゆっくりと首を振って話し始める。「おとうさんは、会ったことがありません。僕がうんと小さいときに、死んじゃったみたいです。おかあさんは、僕が六歳のときに病気で死にました」 あああ、やっぱり重い話だった! 俺が内心でワタワタしていると、エミルはゆっくりと続けた。「おかあさんはよく、昔話をしてくれました。北の雪が降る場所の話です。おかあさんは寒い土地の生まれで、あるときパルティアまで旅をしたら、奴隷商人に捕まってしまったんだって。おとうさんとは奴隷になってから知り合って、結婚はできなかったけど、愛し合っていたって」 なるほど、やはり異民族の血を引いているのか。 ただし父親がパルティア人だから、この子もパルティア人ということになっている。そんなわけだ。「おかあさんは寒い土地の偉い人の娘で、お嬢様だったんだよって言っていました。ほんとかなぁ……」 そこまで言って、エミルの

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第67話 新しい奴隷、再び

     秋にガッツリと畑の税金が取られてしまった。 けれどいつまでも引きずっていては仕方がない。 俺たちは気を取り直して、残った収穫物を楽しんだ。 家に製粉機がなかったので、王都に小麦を運んで製粉してもらう。 さらにその小麦粉をパン屋に持ち込んでパンを焼いてもらう。 製粉とパン焼き、それぞれの場所で手数料と税金(また税金だよ)が取られた。「これじゃあ普通にパンを買うのと値段的に大差ないよな」「そうですね……」 エリーゼもがっかりしている。 だがもう一度気を取り直そう。 今回王都パルティアまで来たのは、パンを焼くためだけではない。 人手不足解消のため新しく奴隷を買いに来たのだ。 人を『買う』という行為は何度やっても慣れない。慣れたくもない。 けれど自分の利益のためにやるのだから、俺もあさましくなったものだ。 奴隷市場に行って、希望を伝えた。 レナとバドじいさんの生産スキルの助手。 エリーゼの店舗経営の補佐。 イザクの農業の助手。 警備兼ダンジョン攻略要員の戦闘職。 それからエミルの年の近い友だちだ。「ユウ様ですね。お噂はかねがね。かなり稼いでいらっしゃるとのことで、羨ましいですなあ」 奴隷商人の態度は前よりも明らかにゴマをすったものに変わっていた。 どうやら俺の店の評判が王都まで届いているらしい。 冒険者相手に商売を成功させて、品質の高いポーションやアクセサリー、最近は武具類も扱っている。  そりゃ、お役人に目をつけられるよな。 奴隷たちを何人も物色……いいや面接して、今いるメンバーの相性も考えながら選んだ。 こっそり考えている開拓村計画のこともある。 人数は多めに。でも慎重に選ばないといけない。 エリーゼと相談しながら進めた結果、今回は六人を買うことにした。 全員分で金貨九枚である。 今

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第66話 税金高すぎ問題

     その日の夕食時、みんなの前で今日の話をする。「……というわけで、畑の作物に税金がかかるんだそうだ」 俺が言い終えると、部屋の中はため息とがっかりした空気で満たされた。「お国のすることは、いつだって横暴じゃのう」 バドじいさんがため息をつく。 俺も続ける。「正直、これからの方針が不安になった。下手にお金を稼ぎ続ければ、国に目をつけられるかもしれない」「実は店のほうも、帳簿に難癖をつけられて」 エリーゼが遠慮がちに言う。「間違いとも言えないような小さいミスをあげつらって、違反金を払えと言われました」「そんなことがあったのか」「はい。その後、間違いではないと証明できたので、お役人は引き下がってくれましたが」 役人どもはろくなことしないな。 最悪、ミスのでっち上げもあり得る。「たぶんそれ、ワイロよこせって意味だと思うぜ」 夕食のかぼちゃスープをすすりながら、ルクレツィアが言った。「帝国じゃよくある話でさ。袖の下を渡しておけば、色んなことを見逃してもらえる。ワイロを拒めば必要以上に厳しくされる。どこも同じだね」「嫌ですねえ。わたくしたちはいいものを作って、真っ当に商売したいだけなのに」「ガウ……」 レナとクマ吾郎もげんなりした表情だ。 エミルは困った顔で大人たちを見ている。「これからもうるさく言われるようなら、ワイロを渡すのもアリか……」 ムカつくが、奴隷たちの身の安全とスムーズな商売のために仕方ないのかもしれない。 エリーゼが言った。「わたしが開拓村にいた頃は、子供だったので。ここまで税金が重いとは知りませんでした。家族がわたしを奴隷商人に売ったのも、やむを得ないと実感しています」 彼女は家族が生き延びるために売られたんだったな。 悲しい思い出を思い出させて申し訳ないよ。 &he

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第65話 税金高すぎ問題

     みんなの意見がまとまったことだし、近い内に王都へ行って奴隷を買ってこよう。  そう思っていたある日、家にパルティア国の役人がやって来た。衛兵を三名ほど連れていた。 役人は横柄な口調で言った。「この家で麦を植えていると聞いて、確認しに来た。畑を見せろ」「どうぞ。こっちです」 家の裏手、イザクの畑は金色の麦穂でいっぱいだ。  横のほうにはナスやトマトなんかの野菜も植えてある。  役人は畑の実り具合を見て唸った。「この広さで麦を栽培しているとなると、税金がかかる」「えっ。俺、収入に対しての税金はきちんと納めていますけど。それとは別に?」 それにそもそも、ここの畑は自家消費用で作物を売ったりはしていない。 俺は思わず文句を言いかけて、ぐっとこらえた。 ここで役人と言い争うのは得策じゃない。「そうだ。麦は我が国の主食。ごく小さな家庭菜園程度なら見逃すときもあるが、ここまで広ければきっちりと取り立ててやろう」 ええー!  ただでさえ二ヶ月に一度の税金はけっこう重いってのに、畑からも取るのかよ。「税率はどのくらいです?」「五割だ」 高すぎんだろ!  この国に食い詰めた人が多いのが分かったわ。  苦労して畑を耕しても、半分も作物を持っていかれるんじゃ暮らしが成り立たない。  肥料とかの経費を差し引くとかそういう考えもない。出来高からまるっと五割だ。 だが、国家権力に逆らえるわけがない……。  今ここで衛兵と役人を皆殺しにするくらいの実力なら、今の俺にもある。  昔は衛兵に歯が立たなかったが、今なら三人相手取っても負ける気がしない。  けれどもそんなことをやってしまったら、俺は一気に重犯罪者だ。  奴隷たちも連座の罪に問われて死刑になるだろう。  そんなのできるわけがない。くそ。「今日は測量をしていく。計算結果にもとづいて税金を請求するので、必ず支払うように」

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第64話 身内会議

     奴隷制は未だに嫌いだが、もうそんなことも言っていられない。「そうしてもらえると、助かります」 夕食時、みんなが揃ったところでこの話を切り出した。 今日はルクレツィアとクマ吾郎も戻っている。ちょうどいい機会だった。「というわけで、人手不足解消のために奴隷を買おうと思うんだ。どんな人がいいとか、みんなの意見を聞きたい」「接客と計算ができる人だと助かります」 エリーゼが言った。 彼女の仕事は店関係。特に帳簿や商品管理は一人でしているので、負担が重いだろう。「私は助手がほしいです」「わしもじゃ」 錬金術のレナと宝石加工のバドじいさんは、同じことを言った。「最近は店の売上が好調で、生産が追いつかないんです。ユウ様たちのダンジョン攻略の際には、良いポーションを持っていってほしいから」「わしも作るはしから売れる今の状態は、ありがたいんじゃが。いいものができたら、ユウ様やルクレツィアやクマ吾郎に使ってほしいんじゃ」「ガウ」 バドじいさんはクマ吾郎の頭を撫でた。 そのクマ吾郎の首には、宝石の嵌った首輪がつけられている。 魔法の守りが込められた、バドじいさん自慢の一品だった。「オレは畑をもっと広げたい。農業スキル持ちを買ってもらえるとありがたい。できれば三、四人」「そんなに?」 思わず言うと、イザクはうなずいた。「広い畑を手入れするには、人手がいる。今はオレ一人でやれる分しかやっていなくて、いつももったいないと思っていた」 今でもけっこう広いと思うんだけどな。 特に今年は春蒔きの小麦を植えたので、そろそろ収穫できそうなのだ。 小麦が採れれば麦粥にしたり製粉してパンにしたりと、自給自足の幅が広がる。「……そういえば、製粉するにも労力がかかるよな」「そういうことだ」 俺のつぶやきにイザクが同意した。 純粋な農作業だけでなく、周辺の仕事も含めての人数か。なるほ

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第63話 身内会議

     春、夏と半年間を鍛冶に目一杯打ち込んだおかげで、俺の鍛冶の腕前はかなり上がった。 扱える素材はずいぶん増えて、今は魔法銀を主体にやっている。 魔法銀は名前の通り、魔力が含まれた銀色の金属だ。 軽い上に魔法と相性がいいので魔法使いに愛用されている。 ただ頑丈さはやや難あり。 なので生粋の戦士たちには、耐久度抜群のアダマンタイトのほうが人気がある。「ユウ様よぉ。ダンジョンでグリーンドラゴンをぶっ殺したら、こんな素材が手に入ったぜ」 ある日、ルクレツィアが変わった素材を取ってきてくれた。 緑色でツヤツヤした鱗である。「おっ、これは竜鱗だな! 素材としては最高クラスだよ。やるじゃないか!」 俺が目を丸くすると、ルクレツィアとクマ吾郎は得意げな顔になった。「へへっ。あたしらにかかれば、ドラゴンだって敵じゃないんだよ」「ガウ!」 まったく頼もしいな。 俺の手の竜鱗を覗き込みながら、ルクレツィアが言う。「ドラゴンは色違いが何種類もいるだろ。そいつらの鱗も素材になるの?」「もちろんだ。ドラゴンは属性を持っているからな。例えばこのグリーンドラゴンは、弱い冷気属性。レッドドラゴンは火属性」「へぇ~。じゃあ、色んな色のドラゴンの鱗をむしり取ってくりゃあ、ユウ様の鍛冶の役に立つな?」 俺はうなずいた。「今の俺の実力じゃ、竜鱗はちょっと難易度が高いが。もっと練習すれば、必ず扱えるようになる。そうすればお前たちの武器や防具を作ってやれるよ」「いいね! ユウ様が作ってくれた斧、切れ味よくてさ。気に入ってるんだ」 そんな話をしていると、バドじいさんがひょっこり顔を出した。「今、竜鱗がどうとか聞こえたんじゃが」「うん、ほらこれ。ルクレツィアとクマ吾郎が取ってきてくれた」 グリーンドラゴンの鱗を見せると、彼は目を輝かせた。「おおお、素晴らしい! 竜鱗は宝石加工スキルでも最高ランクの素材でしてなあ。これがあれば、効果の高い護符が作

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第62話 鍛冶はじめ

     そうしているうちに季節は巡り、三度目の春がやってくる。 俺は記憶喪失で誕生日を覚えていないので、難破船から放り出されて洞窟で目覚めた日を誕生日代わりにしている。 だからその日、俺は十七歳になった。「ユウ様、お誕生日おめでとうございます!」「おめでとう!」「おめっとさん」「ガウ~!」 家の皆が盛大に祝ってくれて、ちょっと照れくさかった。 その日の食卓はいつもより豪華な食事が並んで、みんなでおいしく食べた。 今さら誕生日を祝うような年齢ではないが、こうやってパーティ気分で楽しくやるのは悪くない。 食後のケーキはエリーゼとレナの手作りだそうで、おいしかった。みんなすっかり満腹、満足。 エミルが「僕もお手伝いしたんだよ!」と胸を張っていたので、頭を撫でてやったよ。 レナとバドじいさんの生産品はますます品質が上がって、店の売上は絶好調。 ひっきりなしにお客が来るものだから、店が手狭になってきたので、拡張を決意する。 ついでにいよいよ、俺も鍛冶スキルの練習を始めよう。 王都の大工に出張を頼んで、店舗スペースを広げてもらった。 さらに家の横に鍛冶場を作る。 それなりにお金がかかったが、資金はしっかり貯めてある。問題ない。 これで準備は整った。 ダンジョン攻略と素材採集はルクレツィアとクマ吾郎のコンビに任せる。 ルクレツィアは突撃癖がまだ抜けきっていないが、クマ吾郎がいれば安心だろう。あいつは頼れる熊だからな。「いいか、二人とも。くれぐれも『命大事に』だ」「へいへい。分かってるよ」「ガウー!」 そうして俺は鍛冶に取り掛かる。 最初は扱いやすい青銅なんかを叩いて、そのうち鉄に。 カーン、カーン……。 熱した鉄は真っ赤になって、叩くたびに火花が散っていく。 叩き具合によって金属の硬度

  • 転生したら最弱でした。理不尽から成り上がるサバイバル   第61話 鍛冶はじめ

     統率スキルの効果が確認できたので、俺たちはますます仕事に励んだ。「なあ、ユウ様よ。たまにはあたしもダンジョンに連れて行ってくれよ。腕がなまっちまう」「まあ、そうか。今のとこ店に強盗が来たわけじゃなし、実戦の機会がなかったもんな」 女戦士のルクレツィアがそう言うので、自宅の警備をクマ吾郎と交代してダンジョンに行ってみた。「ヒャッハァ! 死ね、死ねー!」 ルクレツィアはぱっと見、美人なんだけど。 戦い方はバーサーカーだった。「ちょ、ルクレツィア、ストップ! 一人で突っ込んだら危ないだろうが」「ユウ様のサポートが届く範囲までしか、行ってないぜ?」 しかも野生の勘が鋭いバーサーカーである。 彼女の戦士としての腕前の割に、奴隷の値段が安いのはなんとなく察した。 狂犬すぎて御するのが大変だったんだろう。 ボスを見つけて単身で突っ込んでいったときは肝が冷えた。 しかも瀕死になるまでダメージを受け続けて、後一撃で死んでしまう! となってから回復ポーションを飲むのだ。 いくらレナのポーションが効果抜群だと言っても、これはない。「お前、ほんっとーにやめろよ! そんな戦い方してたら、いつか死ぬぞ!」「いいじゃん。戦士は戦いで死んでなんぼよ」 ケロッとした口調で言うので、俺は怒りを覚えた。「いいわけあるか! 俺は誰にも死んでほしくないんだよ。俺自身、今まで必死で生きてきた。生きたくても生きられない人の気持ち、考えたことあるか!?」 この世界で目を覚ましてから、理不尽な死者は何人も見てきた。 あんなふうに死にたくない一念で俺はここまで来たんだ。 ルクレツィアは気圧された様子で口ごもる。「え、あの……?」「お前が死んだら、家のみんなが悲しむと分かって言ってんのか? エミルは泣いて夜寝られなくなるぞ。他の大人だってどれだけ落ち込むことか。それ分かった上で言ってんのか!?」「……悪

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